「秋をおいしくする、うつわ展」飯田隼人さん・中里健太さん のご紹介
Introduction of Potters of Hayato Iida and Kenta Nakazato

(2023.09.28)
10月5日から始まる展示会に向けて、作家の飯田隼人さんと中里健太さんをご紹介させていただきます。お二人には前もって展示会にまつわる質問もご用意しましたので、その回答もお楽しみください。

天平窯 飯田隼人さん


飯田さんと初めてお目にかかったのは、銀座和光で開催された天平窯 岡晋吾さんの展示会だった。ずらりと並んだ晋吾さんの作品に心を奪われ、右往左往していた私に「こちらの瑠璃の作品もいいですよ。」「それは、晋吾先生が窯を開けた瞬間に、ええやろ!と仰っていた作品です。」など作品にまつわる愉しいお話をしてくださったのが飯田さんだった。それから2年経ち、改めて尋ねた天平窯で飯田さんの鉄釉絵付の酒器などを頂戴したのがきっかけでお付き合いが始まり、今回の展示会のご縁を頂くことになった。

飯田さんの料理が相当な腕前であることは周辺の方々から色々伺っていたが、ご本人の話をさらに伺うとその腕前が生半可なものではないことがわかる。学生時代から自炊はもちろん、友人のために料理をしており、学校でもらった桜の木の枝をチップにして、ジビエを燻製にしていた話などは唸る。現在働いている天平窯では、晋吾さんが釣りで収穫した鯛やイカ、メバルなどを捌いて調理することもあるという。「どんな時もなんとなく食べるのではなく、みんなと食卓を囲んで食べる楽しさを大切にしてきました。だから、同じ世代の人たちとご飯を食べに行くのが一番の幸せです。」と教えてくださった。

天平窯でしっかりと陶芸の基礎を頭と体に叩き込まれた飯田さんは、最近では絵付に頼らずに形の良さを追求しているそうだ。どの器も見た目よりも少し軽く持ちやすく、定番人気の鉄釉の四葉小鉢は、端正なフォルムに軽快な色絵が見え隠れしていて、ありそうでなかった洒脱な雰囲気を醸し出している。飯碗ひとつとっても、使っているこちらもご飯の盛り付けが楽しくなる。日々の一汁三菜、一汁一菜を楽しんでいる方に、飯田さんの器を手に取っていただきたい。

「ごはんをおいしくする器とは、どんな器だと思われますか?」

「料理する人間が器選びを迷わなくても良い器だと思います。盛りやすく、この器があればなんかさまになる、そんな器が料理人の負担を無くし、結果的に料理の質を上げる事に繋がると考えています。」

「お好きな秋の料理と器の組み合わせはどんなものですか?」

「秋の料理で好きな物は炊き込みご飯です。キノコや栗やさつま芋など、他の季節には無い魅力があります。秋は土物の器が会うと思うので、土物の柔らかい雰囲気の飯碗に秋の味覚を盛り付けていただきたいです。」

隆太窯 中里健太さん


中里健太さんとお目にかかったのは、私が4年ほど前、友人の縁を頼って唐津を初めて訪れたその日のことだった。太陽が照りつける七月の熱気と湿気の中に現れた隆太窯は、その一帯だけが水を湛えるオアシスのような涼しげな印象を私に与えた。工房とギャラリーの脇を、音もなく小川が流れ、背高く茂った樹木が木陰となり、歩き疲れた私の眼を束の間癒してくれる。その日は偶然、健太さんのお祖父様の隆さん、お父様の太亀さんも横に並んで轆轤を回されていて、三世代が無言で土に向き合う姿に尊さを感じたのを覚えている。

健太さんは、紛れもなく隆太窯の次の時代を担っていく使命を持った人だ。でも驚いたことに、祖父である隆さんや父である太亀さんからは、一度も陶芸を継ぐように言われたことはないという。若い頃は新宿で紳士服のテーラーの勉強をしていたという彼は「テーラリングも陶芸も、一から作っていく楽しみがあって似ているんです。」と教えてくれた。とても謙虚な人柄でありながら、彼の作品を見ていると謙虚さとは一味違った「ぶれない野心」、外柔内剛な彼の精神が見え隠れする。茶碗、水指や花入、真っ当な茶の道具と向き合ったかと思えば、彼の愛してやまないカレーをよそおうのにぴったりな日常使いのお皿や、フォルムの美しい白磁のスープボウルも作っている。

隆さんと太亀さんから受け継いだDNAをしっかりと意識しながら、その意識をあえて無意識に転換し、自分の心が欲しているものを素直に感じ取る。使い手である料理人やお客様の気持ちを汲み取った器を生み出しているようにも見える。弟子入りすると「陶芸」よりも最初に「料理」を仕込まれるという話も伺ったことがある隆太窯。そこで鍛えられた健太さんは、やはり旬の素材をシンプルに、飾りすぎずに美しく魅せる作品が多く、若手料理人のファンも多いのも納得する。

「ごはんをおいしくする器とは、どんな器だと思われますか?」

「料理も器も人の手でつくられるものだと思っています。人の手で作られるものは自然とつくる人の気持ちや心がものの中に込められます。プロとしてやきものを作る以上、きちんとした器であることはもちろんですが、根本は誰かに料理をするときと同じだと思います。
使う人が良い時間を過ごせますようにと、心を込めた器であればどんなうつわでも、おいしく楽しい時間が過ごせると思います。」

「お好きな秋の料理と器の組み合わせはどんなものですか?」

「多めの出汁で炊いた里芋を深めの器で頂く組み合わせが好きです。煮干し・昆布で引いた出汁に醤油で味付けし、煮崩れる手前まで里芋を煮ます。碗なりの器や深めの小鉢に盛り粉山椒を少々。スープと一緒に頂いて秋を感じます。里芋はセレベス(赤芽芋)が好きです。」