岐路に立たされる、日本の発酵文化「小豆島の木桶醤油」
A challenge to preserve Japanese fermented food culture

(2020.10.05)
2020年1月、コロナウィルスが流行する以前に小豆島を訪問した時のお話です。

「醤油、味噌、お酢、みりん、お酒を知っていますか?」と日本人に聞いたら、きっと9割の人は「馬鹿にしているのか、知っているに決まっているだろう!」と返すに違いありません。では「木桶で作られた、醤油、味噌やお酒を知っていますか?」と聞いたら、どれくらいの方が「知っていますよ。木桶醤油を買っていますよ。」と答えるでしょうか。

子育てしている間、子どもが好きな味噌や醤油から始まり、酢、納豆、麹を使った料理、お漬物・・・いろいろな醗酵食の美味しさと魅力に取り憑かれ「醗酵食が生まれる場所って、どんなところで、どんな人が作っているんだろう?」とさらに興味が生まれたとき、まず最初に浮かんだのが、小豆島でした。
生まれた場所が兵庫県の西宮であり、アクセスしやすいという理由はもちろんでしたが、小豆島のヤマロク醤油さんをはじめとする醤油職人がはじめた「木桶職人復活プロジェクト」という、壮大かつヤンチャなプロジェクトをネットで知り、その思い、ビジョンに強く共感したのが大きな理由です。

100年以上前に建てられたヤマロク醤油のもろみ蔵


日本では、江戸時代までは、各地で木桶を使って醤油や味噌、酒作りが行われてきましたが、特に戦後、事業の効率化をはかるために、醤油の工業化、スチールタンクの利用へ移行されてきました。その結果、現在では、全国にある全ての醤油のうち、木桶で作られる醤油はわずか1%に満たない状況と言われています。木桶醤油の、あの独特の香りと旨味は木桶とその風土に住み着いた微生物たちのなせる技であり、スチールタンクでは、その再現はできないのです。それだけではなく、何十年も新桶がほとんど作られない状況が続いたために、桶屋さんも、あと1社残るのみとなり、このままでは木桶文化が絶滅の危機に瀕するという状況の中、立ち上がったのが、小豆島にあるヤマロク醤油5代目の醤油職人、山本康夫さんでした。

木桶によって性格も違い、味も変化するという

初めて、山本さんにお会いしたのは、2019年12月でした。前もってお電話していたとはいえ、山本さんにお会いした際は、まだPETALも立ち上げていなかったため、わたしには名刺さえもありませんでした。名刺もなければ、会社名もない。ダウンコートを着てノートと鉛筆だけ握り締めた私は、きっと「こいつは誰やねん?」と思われてもおかしくない佇まいだったと思います。おそらく5分くらいであしらわれるだろうと思いながら自己紹介をしたところ、なんと山本さんはそこから1時間近く、木桶醤油の作り手としての思いや木桶とそこに住む微生物の面白さ、木桶醤油文化の危機、そしてこれからの野望について、素人の私に懇切丁寧に熱く語ってくださったのです。それだけでも懐の深い方だなあ、と思うのですが、なんと最後に2020年1月に小豆島で行われる、日本中から醤油や味噌の蔵元が集まる「醗酵文化サミット」に来たらどう?とお誘いして頂いたのです。

そのお誘いのおかげで、2020年1月に私は小豆島に再び訪問することができ、日本各地から集まった醤油蔵の蔵元さんをはじめ、発酵食に関わるさまざまな方々とお会いしてお話を伺うことができました。コロナウィルスが流行する前に、あの場所で、「木桶文化を残したい」という思いを一つにした職人たちの熱気、それを陰ながら応援する関係者、家族、今はできなくなってしまった、ソーシャルディスタンス0mmの、魂の触れ合いを目の当たりにできたことは、今年一番の宝物です。

発酵文化サミット2020の様子



どんな説明をするよりも、わたしの感想として、「木桶醤油はとんでもなく美味しい!」というのが、正直な感想です。めちゃくちゃ美味しいんです。ヤマロク醤油さんの蔵は足を踏み込んだ瞬間に、豊潤でいて少し香ばしい、まったりとした醤油の香りが漂ってきます。2年熟成させた醤油に再び材料を加えさらに2年仕込むという再仕込醤油の「鶴醤」は口にふくむと、もうそれは調味料ではなく、一つの料理として完成品のような味わい。これをお餅やアイスクリーム(私はみたらし団子の餡)につけて、あと何がいるだろう?と思うほどです。このお醤油を食べた時、スーパーでお醤油が安売りしているのを「ラッキー」と思いながら買っている場合ではなかったな、と思いました。なぜなら、安いお刺身が木桶醤油一つで、とても美味しくなるのですから。漬け丼なんかにしたらーお魚の喜ぶ顔が思い浮かびます。

山本さんは「これからは、醤油を、もっとワインのように楽しんで欲しいんです。」と仰っています。醤油はワインと違って嗜好品ではありませんから、年ごとに味わいが違うとそれはそれで使いにくくなる方もいるかもしれませんが、ブランドごと、蔵ごとに味わいが違って個性が違うのを楽しむのは、可能性を感じるコンセプトだと感じました。お刺身、ぶっかけごはん、サラダ、肉じゃが、煮魚、すき焼き、それはもう、醤油を変えるだけでそれぞれが、また違った味わいになることでしょう。

ここから生まれたご縁で、小豆島のタケサン醤油の武部さんとお醤油の絵本プロジェクトが始まりました。2020年秋現在、プロジェクトを延期せざるを得なくなりましたが、来年、再来年「木桶醤油」を題材にした、子どもに喜んでもらえる物語を、どんな形であっても実現させたいと思っています。

インバウンドが減り、海外への輸出も減り、BtoBのビジネスも減っていく状況の中、多くの醤油会社さんは様々な苦難と必死に戦っていらっしゃるのだと思います。木桶で作られた美味しい醤油、味噌、味醂、酢、酒が何十年経っても、味わえるかどうか、はまさに今、我々の手に託されていると言っても過言ではありません。まずは今日、その風味豊かな味わいを一度体験してみてください。

ヤマロク醤油ホームページ:  http://yama-roku.net
伝統手法で作られた様々な醤油が購入できる職人醤油: https://www.s-shoyu.com


While I was busy with raising up my child, I got interested in healing effects and nutrition value of food. This led me to experiment and study about all kind of fermented food like soy sauce, miso, vinegar, mirin, pickles and Kouji dishes. My goal remained cooking healthy and tasty dishes for my daughter and family.

2 years since I have been studying fermented food, I decided to visit master craftsmen of Miso gura or Shoyu gura to interview about their enthusiasm for their products and vision.
The first place which came up in my mind to visit was Shodoshima as it is easy to access from my home town Nishinomiya but also I was very impressed with their drive to use wood barrels for fermentation process. The project to revive the use of “kioke” for making soy sauce in Shodoshima has been started up by Yasuo Yamamoto, 5th generation owner of Yamaroku Shoyu in Shodoshima.
In Japan, up until Edo period, soy-sauce, miso, sake, mirin and vinegar fermentation and production utilized wood barrels. However after the war, for the sake of so called improvement of efficiency, wood barrels have been ubiquitously replaced with steel tanks. Today, soy-sauce made with Kioke is less than 1% of the total soy sauce production at present. The beauty of “kioke” made soy sauce is its unique and excellent tastes that comes from the microorganisms which thrive in the kioke.

As a result, only one Kioke or wood barrel maker`s factory was left in 2012 because there has not been much demand for wood barrels for many decades. Fearing the of collapse of Japanese fermented food culture, Yasuo Yamamoto has started up his project called “The Kioke Craftsman revival project”.
When I met Yamamoto san for the first time, I even didn’t have my own name card or company’s name as I haven’t started up anything for new project but visited him with my only strong curiosity. Usually , I might have been given a cold reception when I don’t have name card, but Yamamoto san was different. He enthusiastically explained about the history of Kioke Shoyu and its
unique way of fermentation in Kioke and what he is planning to do in the future.
What is more, he kindly invited me to “Culture of fermentation by Kioke summit” to be held a month after my visit at Shoidoshima.
There are so many expression that I want to share with you about Soy sauce by Kioke but the first thing that I have to proclaim is,
“ These are unbelievably delicious!!!”
Honestly speaking, it’s not just comparable with soy sauce those are made in mass production.

Yamamoto san said, ” I just would like customers to enjoy different tastes of soy sauce like they enjoy tasting the wines”. Of course, soy sauce are not articles of taste but essential articles for Japanese people so it requires stable taste in each product, having said that it would be possible to have different tastes and uniqueness in each makers.
Japanese cuisines such as Sashimi, Niku jaga (Braised beef and potatoes ), sukiyaki, rice with raw egg will be completely different experience when you change the soy sauce in each dishes. I hope you could check out and try these flavorful, tasty soy sauce which might change your life!

Yamaroku shoyu Home page :  http://yama-roku.net
Shokunin shoyu (Online select Soy sauce shop: https://www.s-shoyu.com